問題解決の流れで、いまの問題がどこでどのように起きているか、その成り立ちを漏れなく見極めることはとても有効です。今回は、問題の理想的な解を追求すればその攻め方が見えてくることを事例で体験しましょう。
テーマの設定
テーマは、「美瑛町の丘めぐりに来られた観光客が農地に侵入するトラブルをなくす方策を見つける」とします。ー関連資料(筆者のブログ)。なお、農道にはいる自家用車の問題は除きます。
問題の分析に用いた条件はつぎのとおりです。
7月と8月に毎月30万人の観光客が美瑛町訪れる
1日あたり1万人となる
この観光客1万人は自由に農地にアクセスできるとする
つぎに、図1のようなツリーをつくります。幹に「農地の侵入が起きないための条件」と書き、その先の小枝に観光客に当てはめる条件を漏れなく書きます。
私が考えた条件は、
"農地に行ったある観光客が「農地のルールを知っている」「農地の境界が判る」「ルールを守れるひとだ」の3つの小枝が〇なら幹の答えは〇となり、そのひとは農地に入らない。"
一つでも〇が欠けると答えは〇にならないので、農地に入る可能性があります。その場合は、「パトロールで抑止できる」という条件を加えて、侵入を防ぎます。
このように、先入観を捨てただひたすら問題の理想的な解のたたき台をつくります。
YES/NOツリー
現実には、毎月十件ほどのトラブルが管理者に報告されているらしく、図1で示した小枝の条件のどれかが満たされていないことになります。
そこで、図2のYES/NOツリーを用いてひとつひとつの小枝の条件が問題にどう影響しているか調べていきます。
毎日来られる1万人の観光客に、先ほどの条件(図1)に合わせ3つの質問をします。
それぞれの質問にYES/NOで答えてもらいます
YES/NOの割合は私が仮に決めた数字です ー下記、仮説 ※
全ての質問が終え、パトロールで抑止する必要がない/ある観光客数を求めます
※比率を仮説としたのは、実行にあたって調査による裏付けが必要だからです。
質問➀ YES 60%: 観光マスタープランによる
質問② YES 50%:よくわからないので仮定の値をおいた。看板の効果を含む
質問③ YES 80%:ルールをまもる(マナーのよい)人は100%でない
要因分析
図2から問題を起こす可能性のある項目(要因)の分析はつぎのようになりました。
10,000人の観光客のうち、農地に侵入する心配のないひとは2,400人に過ぎない
10,000人の観光客のうち、パトロールによって農地の侵入の抑止が必要なひとは7,600人となる。内訳は農地のルールを知らないが4,000人、農地の境界が判らないが3,000人、観光客自身のルールに対するマナーの問題が600人。ーこの数字が、問題の要因分析となってます。
※YES/NOツリーは、問題の要因が一つに絞り込めないとき、例えばWeb公告のクリック数→商品ページの参照数→商品の受注数のプロセスの各ステップの良し悪しを評価するときに使えます。
まとめ ー論点整理
以上の要因分析のあと論点整理を行いアクションプランをつくります。次はわたしが行った論点整理です。あなたも何かの事例に応用してみてください。
1.不特定多数の観光客が自由に農地にアクセスできる現状において、次の条件を〇=100%にするのは限りなく難しい。
毎年、新しく来る200万人に農地のルールを知らせることができるか?質問➀
広大な農地の境界線を観光客に判るように示すことができるか?質問②
2.よって、合理的なパトロールの強化が必要だ。
現状、毎日7,600人の侵入の可能性に対し、強力な抑止力となっている
パトロール体制の不足が指摘されている
管理者への報告件数は実際に起きた一部と考えられる
3.観光客のマナーの問題といえるのは600人(6%)とマイナーな要素となっている。質問③
そもそもマナーとルールの意味がひとによって混同があるようだ
4.この問題は、条例をつくればよいというものではなく、条例によって図2のツリーをどう書き換えられるかにかかっている。
「不特定多数が自由に農地にアクセスできる」をアクセス制限にするか
農地のルールを知らせる義務(図2の質問➀に関し)
農地の境界に関する規定(図2の質問②に関し)
パトロール隊に罰則付与の権限などが与えられる(図2の質問③に関し)
Comments